ミズノ ヒロコ   MIZUNO Hiroko
  水野 博子
   所属   明治大学  文学部
   職種   専任教授
研究期間 2002/04~2005/03
研究課題 20世紀国際関係における「少数民族問題」-「少数民族保護」政策と国際連盟を中心に
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 萌芽研究
科研費研究課題番号 1465107
キーワード 少数民族保護条約、国際連盟
代表分担区分 研究代表者
代表者 水野博子
概要 本研究は1920年代の国際連盟による「少数民族保護」政策について、特にヴェルサイユ体制を基軸とした国際関係史の観点から考察することをめざした。とくに、マイノリティの「保護」という思想に内包される問題性を、水野は国際連盟の政策の観点から、また山本はロマ研究ならびに東ヨーロッパからの合衆国への移民の歴史を検討し、以下の結論を得た。 1.「保護」という思考は、家父長的なスタンスを前提とする概念であり、第二次世界大戦後に成立した国民国家を基軸とする国際関係の支配体系の根幹をなしている。 2.本研究で問題提起した「マイノリティ」の「保護」は、歴史的に見て、特に「ドイツ系住民」と「ユダヤ系住民」を中心に議論されたが、その重要な理由のひとつは「離散の民」たる歴史的発展が、一定の領土をあるアイデンティティ集団が支配することを前提に成立する国民国家体制と相いれないからである。 3.「マイノリティ」を問題にするとき、その解決方法として、少数者の文化を支配文化から「解放する」、「あらゆる文化を認め合う」といった多分化主義的、あるいは相対主義的な思想が主張されるが、それは、少数者の文化を所与の前提として設定している。しかし、そうした少数者の文化を作り出してきたものこそが、近代国民国家の支配体系であり、「マイノリティ保護システム」は、こうした現代的な問題設定の限界を批判的に再検討する視座を提供する。 本研究プロジェクトを締めくくるにあたり、2005年2月に国内の中東欧研究者を関西に招聘し、中東欧地域における「マイノリティ」問題の歴史的背景と現状について、ワークショップを組織し、第三者評価を受けた。また、より総合的に第三者評価をうけるため、これまでの研究成果をまとめた研究報告書「記憶のタペストリー-マイノリティ、ナチズム、戦争をめぐる現代文化の諸相」を自主的に作成・発行し、各関係者に配布した。