オオグス エイゾウ   Ogusu Eizo
  大楠 栄三
   所属   明治大学  法学部
   職種   専任教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2006/12
形態種別 学術雑誌
査読 査読あり
標題 書き出しの風景描写―パルド=バサンのEl Cisne de Vilamorta再考―
執筆形態 単著
掲載誌名 HISPANICA
巻・号・頁 (50),135-156頁
概要 本論は,パルド=バサンの小説第4作『ビラモルタの白鳥』(1885)の書き出し,山間の日没描写が内包する歴史的意義を明らかにするものである。
 本作は,彼女の小説史上「風景」で始まる初めての作品であるが,この日没描写に看取できるのは,擬装されたロマン主義的感性だけではない。色彩の並置と光の追求という点から印象主義絵画に等しい感性。さらに,時の経過に随って主人公が動きながら見つめる日没の描写は,日没という一場面が,対象との距離と視角の異なる一連の画像(細かいショット)に分割して提示されており,これは,映画というメディアの発明に先立ち小説に映画的感性が育まれていたことを示唆している。すなわち,書き出しの風景描写に顕在化する視覚的感性は,パルド=バサンと彼女が生きた時代との連動性,風景描写の歴史性を証するものなのである。
ISSN 0910-7789