キシ マキコ   KISHI MAKIKO
  岸 磨貴子
   所属   明治大学  国際日本学部
   職種   専任教授
発表年月日 2015/09/23
発表テーマ 教育工学における質的研究
会議名 日本教育工学会第31回全国大会
主催者 日本教育工学会
学会区分 全国学会
発表形式 シンポジウム・ワークショップ パネル(指名)
単独共同区分 共同
開催地名 国立大学 電気通信大学(東京)
発表者・共同発表者 岸磨貴子(明治大学),杉原真晃(聖心女子大学),久保田賢一(関西大学),大谷尚(名古屋大学),
尾澤重知(早稲田大学),金子大輔(北星学園大学),山本良太(東京大学),時任隼平(関西学院大学)
概要 質的研究SIGでは,学校教育を始め,企業教育や生涯教育など,教授・学習を含む多様な場面において,そこに参加する人々の相互行為のプロセスに着目し,質的なデータを収集,分析することで,これまでにない新しい観点から学習をとらえる.たとえば,小学校の授業で普段大人しい児童が突然,積極的に発言するようになった時,そこにはこれまでになかった「何か」が存在する.あるいは,教師が「何か」のきっかけで,これまでの指導方法を見直し,創造的な授業を実践しようとする.質的研究では,これらの「何か」がどのように児童の発言を引き出したのか,または教師の授業に関連しているのかを、学習プロセスから集めた質的データをもとに明らかにしていく.ここで示した「何か」とは,いつも,誰にでも起こるわけではない.従来の教育工学研究では,「一般性」や「汎用性」が重視されるため,このような出来事は単なる偶然か,特殊な状況のみで起こることととらえられ,これまで見逃されがちであった.
 質的研究SIGでは,教授・学習を含む多様な場面とプロセスに焦点を当て,そこでの出来事を詳細に分析し,その特徴的な過程や構造を質的に分析していくことで,望ましい学習環境をデザイン(活動のデザイン,道具やリソースを含む場のデザイン,共同体のデザインなど)することを目指す.また,質的研究は,単に教授・学習過程の研究だけでなく,インタフェースデザインなどのシステム設計や,認知科学研究における認知過程の分析など,その適用範囲は幅広く,基礎理論の構築にも用いられている(たとえば良く知られた「正統的周辺参加論」は,質的研究の成果である).本SIGでは,「デザイン」だけではなく,現場で起きていることを「解明」したり「理論化」したりすることもめざす.
 質的データを用いた研究方法は様々である.よく知られているものとして,KJ法やグラウンデッドセオリー,談話分析,ライフストーリー,エスノグラフィー,エスノメソドロジーなどがある.これらの方法を使うだけではなく,その背景となる認識論・存在論についても質的SIGを通して議論し,理解を深めていく.