サハラ テツヤ
Sahara Tetsuya
佐原 徹哉 所属 明治大学 政治経済学部 職種 専任教授 |
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研究期間 | 2004~2007 |
研究課題 | バルカン諸国歴史教科書の比較研究 |
実施形態 | 科学研究費補助金 |
研究委託元等の名称 | 日本学術振興会 |
研究種目名 | 基盤研究(B) |
科研費研究課題番号 | 16320100 |
キーワード | 地域史, 国際研究者交流, 多国籍, 国際研究者次流, 西洋史, 歴史教育, 歴史教科書, バルカン |
代表分担区分 | 研究分担者 |
代表者 | 柴 宜弘 |
概要 | 本研究では、バルカン諸国の歴史教科書の記述を「バルカン」の地域史という枠組みから比較検討した。分析対象は第一にバルカン各国の中等教育で使用されている歴史教科書である。また、第二に現在バルカン諸国の歴史家および歴史教師か共同して進めているバカン諸国の共通歴史副教材の作成プロジェクトにも着目し、このプロジェクトの紹介と分析も進めてきた。研究成果の発表の機会としては、2005年11月と2007年11月にそれぞれ国際シンポジウムを開催し、バルカン諸国と日本を含めた東アジアでの歴史教科書の記述の動向か紹介された。また、これらのシンポジウムでは、バルカン諸国の共通歴史副教材の作成プロジェクトや日中韓の枠組みで進められている歴史教材の作成の動きなど、両方の地域で進行している歴史教育用の共通教材の作成計画に関しても注目し、自国史の枠を相対化するその成果と問題点を検討した。なお、2005年のシンポジウムの報告は既に柴宜弘編『バルカン史と歴史教育』(明石書店、2008年)でも公開している。 研究の結果、バルカン諸国の歴史教科書では未だに自国史の枠組みが強く残存し、社会主義後の1990年代に発行された歴史教科書の記述においてもその時々の政権の意向が反映される傾向が明らかにされた。また、共通副教材の作成という形で自国史の枠組みを越え「バルカン」という枠組みに基づいた歴史記述を形作る試みが着実に続けられていることと、そしてバルカンの歴史研究者の経験は日本を含む東アジア地域の歴史記述を作成する際にも有用であるとの認識が得られた。しかし、他方でバルカン共通副教材では歴史認識のすり合わせが困難であるため資料集以上のナラティブを伴う教材の作成ができなかったこと、採用に対して各国で反対の動きが出ていることも報告された。これらは自国史の相対化が困難であることを改めて証明しており、その克服に向けた更なる取り組みが必要であることを示していると言えよう。 |