サトウ バン   SATO BAN
  佐藤 伴
   所属   明治大学  農学部
   職種   助教
研究期間 2010~2011
研究課題 マウス着床前胚におけるラフト機能解明
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 特別研究員奨励費
科研費研究課題番号 10J02767
キーワード 脂質ラフト, 着床前胚, スフィンゴ糖脂質, SSEA-4, タイムラプス観察, ラフトマイクロドメイン
概要 本研究では、ライブセルイメージングによるSSEA-4の可視化を通じ、哺乳類着床前胚におけるラフト機能解明を目指す。初年度に作製した卵特異的E-cadherinノックアウト胚を用い、E-cadherin欠損時におけるSSEA-4(monosialylGb5Cer(MSGb5Cef))の動態観察を行った。MSGb5Cerは欠損胚において割球界面への集積は認められず、割球の頭頂部に多く分布していた。このことから、MSGb5Cerの正常な分布にはE-cadherinの発現が必要と考えられた。未標識の抗体添加時に、E-cadherinの分布は、通常の割球界面での分布から割球表面での分布へと変化していた、さらにこの局在変化は抗体濃度依存的であることが判明した。また、あらかじめ蛍光標識MSGb5Cerを添加している胚では、高濃度の6E2抗体の添加によって通常とは異なり割球界面に進入できずに割球表面に集積する様子が観察された。生細胞イメージングにおいても、抗MSGb5Cer抗体と抗E-cadherin抗体の結合したシグナルが卵割時に分裂溝に伴に重なって移動していく様子が観察されていることからE-cadherinの局在や分布にMSGb5Cer豊富脂質ラフトが関与している可能性が示唆された。アクチンの重合阻害剤であるサイトカラシンDを作用させることで、MSGb5Cer豊富ラフトの分布に及ぼす影響について検討した。アクチンの重合阻害によって、割球界面への集積が減少し、割球表面に多くのシグナルが認められた。以上の結果および前年度の結果から、マウス着床前胚で、糖脂質豊富ラフトが接着分子の適所への配置を促すことによって、卵割に関与していると考えられた。これまでに、ウニなどの無脊椎動物においては卵割におけるラフトの関与が既に報告されているが、哺乳類では初めてラフトの関与を明らかにしたことは重要でありその意義は大きい。今後、接着分子E-cadherinとラフトに含まれる糖脂質やGPIアンカー型のタンパク質との相互作用を培養細胞の系などで検討することで着床前期におけるラフトの役割が明確となることが期待される。