ナカムラ ケンイチ   NAKAMURA KENICHI
  中村 健一
   所属   明治大学研究・知財戦略機構・農場  研究・知財戦略機構
   職種   特任教授
研究期間 2004~2005
研究課題 漸近解析的手法による反応拡散系の縮約とその数学的正当化
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 若手研究(B)
科研費研究課題番号 16740046
キーワード 比較定理, 進行フロント波, 縮約, chemotaxis growth model, 界面方程式, 反応拡散方程式系
代表者 中村 健一
概要 昨年度に引き続き、解の漸近展開の高次の項を利用して、さまざまな自然現象の数理モデルとして提案されている反応拡散方程式系の界面方程式の導出を数学的に正当化し、解の漸近挙動の解析を行った。以下、今年度の研究成果を具体的に述べる。 1.興奮系に現れるスパイラル波の形状および角周波数の解析 Belousov-Zhabotinsky反応に代表される興奮系と呼ばれる化学反応に現れるスパイラルパターンを解析するために、キネマティックモデルと呼ばれる曲線の発展方程式の解析を行った。従来知られていた凸の定常回転スパイラル解だけでなく、凹凸が変化する定常回転スパイラル解の構造を完全に決定し、それをもとにスパイラルの形状と角周波数との関係を数値シミュレーションにより詳細に調べた。 2.走化性生物の増殖・拡散を記述するchemotaxis-growthモデルの界面ダイナミクスの解析 ある化学物質の濃度勾配を感知して移動する生物の個体数密度の時間変化を記述する、chemotaxis-growthモデルの界面ダイナミクスの解析を漸近展開により行った.この方程式は2種連立系であり、通常の意味での比較定理は成立しないが、特殊な形の比較定理が成立する。これを利用して、解の漸近展開の最初の2項を正確に求め、その情報を利用して適切な比較関数(優解・劣解)を構成することで、これまで知られていた優解・劣解よりもより精密な比較関数を構成することに成功した。従来の手法では、特異極限下で得られる界面方程式の解を長時間にわたって捉えることはできなかったが、新しい比較関数ではより長時間の比較による評価が可能になった。これをさらに発展させると、界面方程式の平衡解の線形安定性を利用して,もとの反応拡散方程式系の平衡解の安定性が導かれることが期待される。