サクヤマ タクミ
SAKUYAMA Takumi
作山 巧 所属 明治大学 農学部 職種 専任教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2009/01 |
形態種別 | 大学・研究所紀要 |
標題 | スイスのFTA戦略から学ぶもの-日スイスEPA交渉の経験から |
執筆形態 | 単著 |
掲載誌名 | 農林水産政策研究所レビュー |
掲載区分 | 国内 |
出版社・発行元 | 農林水産省農林水産政策研究所 |
巻・号・頁 | (30),36-41頁 |
概要 | 本稿では、日本とスイスとの経済連携協定締結交渉に従事した筆者の経験を踏まえて、スイスが積極的にFTAに取り組んでいる背景を明らかにした上で、今後我が国がEPAを推進していく上でスイスの経験から学ぶべき教訓を導き出す。
スイスによる積極的なFTA締結を可能ならしめている背景は、次の2つに要約されよう。第1は、輸出依存度が極めて高く、輸出市場を維持する上でFTAの推進を求める経済界から強い要請がある中で、将来的なEU加盟やフードツーリズムの抑制といった対外的、国内的な要因から、長期的にFTAへの対応力を高めるような農政改革を自発的に推進する誘引があることである。他方で第2の要因として、自由化率の低さに示されるように、農業分野で過度に野心的な自由化を追求せず、国内農政改革で可能な範囲内に譲許の内容を収めていることである。輸出市場はしっかりと確保するという「実利主義」と、国内農業維持の観点から越えられない一線は死守するという「現実主義」の組み合わせが、スイスのFTA政策の大きな特徴と言えよう。 日本とスイスとは与件が異なる面も多く、その経験を単純に当てはめることはできない。他方で、我が国の輸出依存度は1995年から2005年の10年間で9%から14%へと上昇しており、今後の人口減少に伴う国内市場の縮小等を踏まえるとこうした傾向は更に続き、これによって輸出市場を獲得する上での日本農業に対する市場開放圧力も高まる可能性がある。こうした中長期視点に立てば、我が国がスイスの経験から学ぶことは依然として多い。 |