タケダ タクミ
Takeda Takumi
武田 巧 所属 明治大学 政治経済学部 職種 専任教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2010/10 |
形態種別 | 大学・研究所紀要 |
標題 | レントとレント・シーキング理論の再定義 |
執筆形態 | 単著 |
掲載誌名 | 明治大学『政経論叢』 |
巻・号・頁 | 79(1・2),85-132頁 |
概要 | 日本経済の制度転換を促すためにレントを人為的に設置し、制度転換のためのインセンティブとして機能させることは果たして有効であるのか。本稿は、上記の問いに対する回答を探るための第一段階として、まず、混乱の著しいレントとレント・シーキングの概念について、Harberger(1959)を契機に深化していった理論的解釈の変遷を概観しながら整理を試みている。次に、レントとレント・シーキングに対する新古典派的解釈に挑んだKhan and Jomo K. S. (2000) を取り上げることで、独占レントにとどまらない多様なレントの存在を再確認するとともに、個々のレントに対する評価というものは、その社会的費用のみならず、レントを通じて新たに築かれる権利構造やインセンティブに基づいて、時間とともにもたらされ得る社会的便益とあわせて考慮すべきと強調する。こうした新たな評価基準を用いると、レントを一括して経済効率性を犠牲にし、成長を抑制するものと断ずることはできず、効率性を高め、成長を促進し得るレントの存在を潜在的に認めざるを得ない。
それでは日本経済の制度転換をレントに託すことができるのか。残念ながら、現時点での結論は懐疑的でしかない。誰がレントを管理するにせよ、それは「限定合理性」の中で不確実性に対処していくことにならざるを得ない。しかも、レントは、それがひとたび創られると多方面からのレント・シーキングに晒されて、その性質を変えていくことが観察されている。レントを適切に管理することが難しければ、レントを人為的に設置することは「政府の失敗」を招来しかねないのである。 |
ISSN | 0387-3285 |