シモナガ ユウキ   Shimonaga Yuki
  下永 裕基
   所属   明治大学  農学部
   職種   専任准教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2023/03
形態種別 学術雑誌
査読 査読あり
標題 印欧語根 *terə- の展開力を考える —英単語 trench の語感をめぐって
執筆形態 単著
掲載誌名 Asterisk
掲載区分国内
出版社・発行元 イギリス国学協会
巻・号・頁 31,30-44頁
概要 「塹壕」を意味する英語の名詞 trench の英語文献における最古の語義は、OED によれば「森や林を貫きとおす小道」の意であるが、現在 trench をそのような意味に用いることはない。一方、trench はきわめて多岐にわたる語義に発展しており、「安全に守られた場所」、「ウマの腸の寄生虫」、「疝痛性腹痛」等の意味がある。また動詞として用いた際には、trench はなにかが「侵入する」動きを意味する。なぜ trench はこのような多義性を獲得したのだろうか。
 Calvert Watkins はその印欧語根辞典で、「横切る、通り抜ける、克服する」意の PIE *terə-2 を語源とみており、そこには日本語の動詞「きる」の意味発展にパラレルな要素がある。
 日本語の動詞「きる」には「切る、切り分ける」意から「行為の完了」の意に至るまで、さまざまな用法があるが、摩擦を伴う力の存在を示唆している。もしこの類推が有効であるとすれば、Watkins はその印欧語根辞典で「こする」意の PIE *terə-1 と 「横切る、通り抜ける、克服する」意の *terə-2 を別の語根として扱っているけれども、両者を同一の語根とみなせる可能性が高まる。英単語 trench のもつ、いまや廃用となった語義も含めた多義性は、「摩擦力を行使する」動きを意味する *terə- がその展開力を発揮した結果なのである。
ISSN 2758-9439 (online)