ストウ イサオ   Suto Isao
  須藤 功
   所属   明治大学  政治経済学部
   職種   専任教授
発表年月日 2025/06/08
発表テーマ アメリカ多国籍企業の資金調達について―1960年代後半の直接投資抑制政策を中心に―
会議名 日本金融学会2025年度春季大会・金融史パネル
主催者 日本金融学会
学会区分 全国学会
発表形式 シンポジウム・ワークショップ パネル(指名)
単独共同区分 単独
国名 日本
開催期間 2025/06/07~2025/06/08
概要 アメリカ企業の海外進出(現地での生産と販売)は 19 世紀後半には開始され、第1次世界大戦後は市場と資源を求めてヨーロッパやカナダなどに積極的に進出した。第2次世界大戦後 1960 年代になると、西ヨーロッパ先進諸国の通貨交換性回復や関税同盟(EEC)の結成を契機に製造子会社の海外直接投資(FDI)が増加して、アメリカ大企業の多国籍化が急速に拡大した。またアメリカ大銀行の多国籍化も進展して、多国籍企業の資金需要や進出先の多種多様な情報の提供を支援した(小林 2007) 。
 ところが、アメリカの資本収支赤字が経常収支黒字を上回り、金準備が減少してドルの金兌換に対する国際的な懸念(ドル危機)が発生すると、アメリカ政府は国際収支問題への対応の一環としてドル防衛策に着手した。本パネルのテーマ 「多国籍企業」に関連したアメリカ政府の政策としては、1964 年の利子平衡税(1965, 1967, 1969 改定)、1965 年対外信用抑制プログラム、とりわけ 1965 年の自主的直接投資[抑制]プログラム、1968 年の強制的直接投資[抑制]プログラムの実施が注目される(Holbik 1972)。わが国ではアメリカ資本市場へのアクセスを制約する利子平衡税や対外信用抑制プログラムの影響に関心が集中し(高橋 2018、浅井 2019) 、直接投資抑制プログラムに対する研究はわずかに過ぎない(江口 1969、宮崎 1982) 。しかし、直接投資抑制政策はアメリカ多国籍企業に直接的な影響を及ぼす問題であるだけでなく、国際金融・資本市場やアメリカ多国籍企業の進出先諸国にも関わる問題であったであろう。本報告はアメリカ多国籍企業の資金調達に着目し、アメリカ政府の直接投資抑制政策が企業の多国籍化を金融面で深化させた側面に注目する。