ヤマモリ ミチエ   YAMAMORI MICHIE
  山森 理恵
   所属   明治大学研究・知財戦略機構・農場  国際連携機構
   職種   特任准教授
発表年月日 2022/08/26
発表テーマ 上級レベル向けアカデミックライティングの授業における実践 ―批判的に考える力を育むための教師の役割―
会議名 第25回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム
主催者 ヨーロッパ日本語教師会
学会区分 研究会・シンポジウム等
発表形式 ポスター
単独共同区分 単独
国名 オランダ
開催地名 ライデン市
開催期間 2022/08/25~2022/08/27
概要 本発表は批判的に考える力の育成を目指した実践の過程とそこでの教師の役割、その結果を報告するものである。実践者である私の教育観を明らかにしたうえで、実践の過程と教師としての役割を省察し、その結果を明らかにすることは、自らの次の実践をよりよくし、他の実践者が新たな実践を行っていくことに寄与すると考えられる。
本実践は上級レベル向けのアカデミックライティングの日本語授業で、レポートの書き方及び発表スキルを学ぶ授業として設けられたものであった。私はその授業の担当にあたり、レポート執筆や発表だけでなく、批判的に考え、問題点を抽出し、異なる立場、弱い立場にある人に目を向け、その解決方法を自分なりに考えることができるようになることを授業の目標とした。それは、いかなる教育の場においても社会の一員として批判的に考え、問題に気づき、その解決方法を考える力を育むことが重要であるという私自身の教育観に基づいている。
授業はオンラインで行い、レポートを書くスキルと考える力、両方が磨けるよう計画した。実践の過程で私は教師として、①機会を設ける、②働きかける、という2つの役割を担った。①として、レポートや発表スキル向上のため、レポートの書き方と構成を学ぶ機会、実際にレポートを段階を経て執筆し、その内容を発表する機会を設けた。また、考える力を育むため、レポートの準備段階や発表の機会を利用して多様な問題や考えに触れ、それらに対し自由に意見を述べ合う機会を設けた。さらに②として、目標を明示し、その意義を伝え、助言を行った。多様な問題に触れる際やレポートのテーマ決定・執筆の際、意見だけでなく解決方法まで考えて述べるという目標を示し、そのような姿勢が社会の一員として重要であることを伝えた。また、提出物に対し達成したことを肯定的に評価し、達成できていない点への気づきを促すフィードバックを行った。
その結果、受講生11名のうち研究協力の得られた9名の各段階での提出物の記述内容から、授業の過程が様々な問題に気づく機会となったことが示唆された。また、問題に対し意見を述べるにとどまっていた受講生も、1名を除きレポートの最終稿の段階では解決方法まで言及していた。
社会の一員として批判的に考えることを目指した実践の過程とそこでの教師の役割を示すことで日本語授業の新たな取り組みが増えることを期待する。